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長崎地方裁判所 昭和41年(行ウ)8号 判決

原告 桶口秀雄

被告 長崎県知事

主文

原告の請求を棄却する。

ただし被告が原告に対し福江市北町七〇四番宅地八五・九五平方メートル(二六坪)の換地として、福江市中央町六番三一号(一八街区二六画)宅地七六・一六平方メートル(二三・〇四坪)を指定した処分は違法である。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告が原告に対し福江市北町七〇四番宅地八五・九五平方メートル(二六坪)の換地として、福江市中央町六番三一号(一八街区二六画)宅地七六・一六平方メートル(二三・〇四坪)を指定した処分を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として次のとおり述べた。

一、原告は、福江市北町七〇四番宅地八五・九五平方メートル(二六坪)を所有していた。

二、被告は、昭和三七年九月二六日の福江市の大火のあと、福江市の近代都市化のため福江都市計画事業火災復興土地区画整理事業の施行に着手し、土地の減歩換地により道路の新設拡張を計り、昭和四一年九月一四日、原告所有の前記宅地に対し福江市中央町六番三一号(一八街区二六画)宅地七六・一六平方メートル(二三・〇四坪)を換地として指定する旨の処分をなし、右処分は同月一五日原告に通知された。

三、しかしながら、右換地指定処分は、次に述べるような違法がある。即ち、原告所有の従前の宅地は、別紙見取図(一)に示すような位置にあつて、間口八・六メートル(四・七三間)あり、原告はその地上に店舗を所有していてこれを訴外岩田正に賃貸し、同人が右店舗で衣類販売業を営んでいた。そして同土地の西隣には訴外福地新一が面積一、三九三・〇五平方メートル(四二一・四〇坪)、間口一二・七二メートル(七間)の宅地とその地上に店舗を所有して、教科書、文房具、食糧品その他の日用雑貨品の販売業を営み、その西隣には訴外山本熊次が面積二三四・七七平方メートル(七一・〇二坪)間口六・三六メートル(三・五間)の宅地とその地上に店舗を所有して、履物販売業を営み、さらにその西隣には、訴外山村チノが面積四〇〇・三六平方メートル(一二一・一一坪)間口八・一八メートル(四・五間)の宅地とその地上に店舗を所有して、かまぼこ製造業を営み、原告所有地の東南に接して訴外才津惣太郎が面積七一平方メートル(二一・四八坪)の宅地とその地上に家屋を所有して旅館業を営み、原告らの右各所有地の前には巾約六メートルの道路(通称新栄町通り)が東西に通じ、山本所有の土地の前から北東へ右新栄町通りとT字型に巾約八米の道路(通称酒屋町通り)があり、これに面して訴外平川米丸が面積一一四・〇四平方メートル(三四・五〇坪)、間口三・二七メートル(一・八間)の宅地とその地上に店舗を所有して陶器販売業を営んでいたが、右二つの道路が交叉する場所は福江市で最も商業が繁栄していたから右福地、山本、山村の各所有地は商業上最も有利な場所であり、原告の所有地は右三名の土地につぐ場所であつた。ところが前記土地区画整理事業施行の結果

(1)  新栄町通りは巾一六メートルに拡張され、酒屋町通りは新栄町通りを貫いて西南の方向に延長されて新道(通称寿通り)が設けられ、別紙見取図(二)に示すように、前記山村は新栄町通りと寿通りとが交叉する一方の角地に面積二四四・七三平方メートル(七四・〇三坪)、間口一七・〇八メートル(九・三九間)および寿通りに面して右角地から約二一八メートル奥に面積八七・六二平方メートル(二六・八一坪)の各換地を、前記山本はその向い側の角地に面積一五七・六八平方メートル(四七・七〇坪)、間口六・三六メートル(三・五間)の換地と寿通り沿いの右山村の換地の南隣に面積四四・六三平方メートル(一三・五坪)、間口四・五四メートル(二・五間)の換地を、前記才津はさらにその南隣に面積五三・五五平方メートル(一六・一九坪)、間口五・四五メートル(三間)の換地を、前記平川は新栄町通り沿いの右山村の換地の東隣に面積一〇〇・九二平方メートル(三〇・五二坪)、間口五・〇九メートル(二・八間)の換地を、前記福地はその東隣の面積一七・八八平方メートル(五・四一坪)、間口〇・九一メートル(〇・五間)の市有地を距てたさらに東隣に、間口九・一八メートル(五・〇五間)、寿通り沿いの才津の南隣に間口二五・四五メートル(一四間)面積一、一一五、九三平方メートル(三三七・五七坪)の換地を与えられたのに、原告には新栄町通り沿いの福地の換地の東隣の従前の土地に比べて商業上不利な位置に間口五・八一メートル(三・一九間)の前記の換地を与えられた。

(2)  また、原告と近隣の土地所有者の従前の各土地に対する各換地率を比較すると、原告の従前の土地の東側にあつた訴外有川二吉郎、同有川繁雄各所有の従前の土地の分筆前の面積は合計して一三七・五五平方メートルであつたが、これは昭和三七年一一月一三日に公簿上の面積が更正されたもので、その更正前の地積は合計一一八・七四平方メートルであつたところ、右土地に対する換地の合計面積は一三七・五五平方メートルであるから、これを更正される以前の公簿上の面積に比較すると同人らの右換地の合計地積はむしろ従前の土地の一・一六倍となつている。その外前記近隣の者の換地率は平川光丸は約〇・八八四倍、山本熊次は〇・八六倍、福地は〇・八倍、才津は〇・七五四倍、山村チノは〇・八三二倍であるのに対し、原告の従前の土地の公簿上の地積に対する換地率は約〇・七六倍である。しかも、原告の従前の土地の実際の面積は一〇八・一九平方メートル(三二・七三坪)であつたが、大火後土地の測量を土地家屋調査士に依頼する者が増え、福江都市計画事業火災復興土地区画整理事業施行規則第一六条所定の期間までに地積の更正登記手続をすることができなかつたため、原告に対しては公簿上の地積を基準にして換地が与えられたから、原告の換地は、従前の土地の実際の地積に対する換地率僅か約〇・七〇四倍に過ぎないことになる。

(3)  さらに福江市における最も繁栄している新栄町通り沿いの原告と右訴外人らの各従前の土地の間口と換地の間口とを比較すると、山本は増減がなく、山村は約二倍、平川は約一・五倍と増加しているのに対し、福地は約〇・七倍、原告は〇・六七倍といずれも減少している。

以上のような点から考えると被告が原告に対してなした前記換地指定処分は近隣の者に比較して原告のみが著しく不公平、不合理に取り扱われているのであつて、これは土地区画整理法第八九条第一項の「換地を定める場合換地と従前の土地の位置、地積、利用状況、環境等が照応するよう定めなければならない」との規定に違反し、原告の従前の土地と照応しない違法なものといわなければならない。

四、よつて原告は被告のなした前記換地指定処分は違法として、その取消しを求める。

被告訴訟代理人は、主文第一項同旨および訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として次のとおり述べた。

一、請求原因事実のうち、原告の従前の土地の実際の面積が一〇八・一九平方メートル(三二・七三坪)であり、大火後土地の測量の依頼者が増えたため原告において地積の更正登記をすることができなかつたことは不知、原告に対して指定された換地が従前の土地と照応せず、原告が近隣の土地所有者に比較して著しく不公平、不合理に取り扱われていることは否認する。その余の事実は認める。

二、被告が原告に対してなした換地指定処分は、土地区画整理法所定の手続に従い適法に確定した換地計画に基づいて行われたものであるから何らの手続違背はなく、しかも本件換地計画は、福江市の定めた福江都市計画事業火災復興土地区画整理事業施行規則および長崎県の定めた福江都市計画火災復興土地区画整理事業換地交付細則に遵拠し、可及的綿密な客観的基準に則り定められたところの土地区画整理法第八七条所定の換地設計、各筆換地明細、各筆各権利別清算金明細を基礎として決定されたものである。又同整理事業施行規則第一八条によると換地計画において換地を定めるに必要な従前の土地の地積は、事業計画の認可の公告があつた日から二週間を経過した日、現在の土地台帳に記載された地積によるべく定められているから、仮に、原告の従前の土地の実際の地積が原告主張のとおり公簿上の地積よりも広いものであつたとしても、原告の換地を定めるについて、原告の従前の土地の地積を右基準日の土地台帳の地積を基準にしたことは何ら違法はなく、したがつて原告に対してなされた換地処分が原告主張のように、従前の土地の位置、地積、利用状況、環境等に照応せず、近隣の者に対する換地と比較して不公平であるとは言えないし、原告のこの点についての主張は単なる主観的価値判断に過ぎないから失当である。

三、仮に、何らかの点に不公平なところがあるとしても、これは換地指定処分が不当であるというに止まり、違法とまではいえないから、違法として取り消されるべきものではない。一つの換地指定が取り消されると、必然的に適法な手続を経て確定した換地計画の全面的修正を余儀なくされ、収拾すべからざる事態を招くなら、基本たる換地計画そのものを離れて個々の換地処分を取り消すことはその手続違背の場合を除いて有り得ない。

四、仮に原告に対する換地指定処分が違法で、取り消し得べきものであると認められるとしても、一の換地指定処分の取消しの結果は、前記のごとく換地計画の全面的修正を余儀なくされ、原告以外の第三者に適法になされた換地指定処分の全面的無効をも招来し、収拾すべからざる事態を招き公の利益に著しい障害を生じることになるから、行政事件訴訟法第三一条第一項により棄却されるべきである。

(証拠省略)

理由

一、請求原因第一、二項の事実は当事者間に争いがない。

二、そこで原告に対する右の換地指定処分が違法であるかどうかにつき判断するに、原告および訴外福地新一、同山本熊次、同山村チノ、同才津惣太郎、同平川米丸、同有川二吉郎、同有川繁雄ら各所有の従前の土地および道路の位置、形状が別紙見取図(一)に示されるようなものであり、その土地の間口、地積(原告の土地については公簿上の地積)、利用状況が原告主張のとおりであつたこと、区画整理事業施行の結果新栄町通りが巾員約一六メートルに拡張され、酒屋町通りは新栄町通りを貫いて延長されて寿通りが新設されたこと、原告および前記訴外人ら各所有の従前の土地に対し与えられた各換地の位置が、別紙見取図(二)に示されるようなものであり、その各換地の間口、地積が原告主張のとおりであることは当事者間に争いがなく、証人川口一の証言、原告本人尋問の結果によると新栄町通りと酒屋町通りがT字形に交叉する場所附近は福江市において最も商業が繁栄する場所の一つであり、従前は酒屋町通りはその北側に船の発着場があつたため新栄町通りより繁栄していたが、近時右発着場がその南東に移り、又新栄町通りの東端側にバスの発着場が新設されて以来、船やバスの乗客が新栄町通りを往来するようになつたため、繁栄の中心は漸次酒屋町通りから新栄町通りに移り、本件換地指定当時新栄町通りの方が酒屋町通りよりも商業上有利なところになりつつあつたことが認められる。成立に争いのない乙第三号証によると本件換地指定当時新栄町通りにあつた原告や訴外福地新一所有の従前の土地よりも酒屋町通りにあつた訴外平川所有の従前の土地が一坪あたりの固定資産税の評価額は高くなつており、これに各土地の奥行による価格逓減の差異を考慮に入れてもなお固定資産税の評価においては新栄町通りよりも酒屋町通りの方が高くなつていることが認められるが、右の事実をもつてしても前記認定を左右することはできず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

右争いのない事実および右認定した事実を綜合すると、原告および前記訴外人らの従前の土地は新栄町通りと酒屋町通りが交叉する場所を占めていた山本、山村の土地が商業上最も有利な場所であり、以下新栄町通りに沿つて右交叉点から離れるに従い福地、原告と順次不利となり、酒屋町通りの平川の土地は福地のそれに次ぐ場所となつており、袋地で右の交叉点から最も離れていた才津の土地が最も不利な場所であつたと認められるところ、前記換地処分の結果は見取図(二)の如く、山本は新栄町通りと寿通りが交叉する西の角地に新栄町通りに面する部分だけでも従前の土地と同じ間口を有する換地の外、寿通り沿いの山村の換地の南側に間口四・五メートル(二・五間)の換地を、山村は右交叉点の東の角地に新栄町通りに面する部分だけでも従前の土地の約二倍にあたる間口を有する換地を、平川は従前の土地より有利な新栄町通り沿いの山村の右換地の東隣に従前の土地より約一・五倍の間口を有する換地を、才津は袋地であつた従前の土地よりもはるかに有利な寿通り東側の山本の換地の南隣に間口五・四メートル(三間)の換地をそれぞれ与られ、いずれも有利な取扱いを受けたのに対し、福地は右交叉点の東角地の端から新栄町通りに沿つて約二三メートル(一二・六間)も離れた平川の右換地よりも不利な場所に、従前の土地に比較して〇・六倍の間口を有する換地を、原告は更にその東隣に右角地の端から三二メートル(一七・七間)も離れた場所に、後前の土地と比較して約〇・六七倍の間口の、角地からの距離にして従前よりも約二〇メートルも東に寄つた場所に換地を与えられたに過ぎないから、原告および右福地の換地は位置、間口、環境等において従前の土地と少なからず照応しないばかりか、山村、山本、才津、平川の各換地に比較して著しく不公平に取扱われたということができる。

尤も成立に争いのない乙第二、第六号証、第七号証の一ないし六、第八号証によると換地計画を定めるにあたつては従前の土地の道路に面している部分の路線価を基準とし、これに奥行を勘案して各従前の土地の価格を算出し、これと同様の方法により換地の価格を算定して、従前の土地と換地の価格とが大体において等価となるように各換地を定めたことが認められるけれども、前記のように酒屋町通りに比較して新栄町通りの方が実際において商業上有利であると認められるにも拘らず、前掲乙第六号証によると、酒屋町通りにあつた平川の従前の土地の路線価指数が新栄町通りの原告や福地のそれより高くなつているように従前の土地の評価が必ずしも正確であるとは認め難い上、原告の従前の土地は商業地であるから、その位置や間口の広狭、地形の長短、角地よりの遠近は商業上極めて重要な意義をもち、場合によつてはそれが営業の死命を制することさえある。したがつて商業地の換地にあつては、換地が右の点においても従前の土地と照応するよう最大の考慮が払われなければならず、単に換地が価格の点において従前の土地と等価であり、その価格の算定につき近隣の者と同じ扱いがなされているだけでは、公平な取扱いがなされているということはできない。

そして、前記のとおり本件土地区画整理事業施行においては、新栄町通りと交叉して巾約八米の寿通りが新設されたのであるから、その結果として右新設道路や新栄町通りに面する各土地の所有者の換地の間口が従前の土地に比し減少したり、その位置がずれる等、ある程度の不利益を受けることになるのは止むを得ないところであるが、他方道路新設により角地ができたのであるから、右のごとき不利益の大部分は、通常角地を換地として与えられる者の受ける利益の中に吸収されて然るべき筈のものであり、仮にそうでなくても、可能な限り周辺の土地所有者に平等に負担さすべきであつて、一部の者にだけその不利益を負担させることはできないものといわなければならない。それなのに、原告や福地に対してなされた前記のごとき不利益な処分は、平川や才津が何ら首肯し得る理由がないのに従前の土地より有利な飛換地を与えられたことによるものであるほか、本来山本や山村が負担すべき道路新設による間口減少の不利益を同人らに負担させず、原告や福地にだけ負担させたことに基因するものということができる。

ところで、土地区画整理法第八九条第一項には、換地計画において換地を定める場合においては、換地および従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するよう定めなければならない旨規定されているけれども、換地を従前の土地と完全に照応するように定めることは、前記のように道路の新設、拡張を伴う減歩換地の場合には極めて至難のわざであつて、技術的にも不可能といわなければならないから、換地が従前の土地と多少不照応の点があるとしても、そのことだけでもつて直ちにその換地処分が違法であるということはできない。しかしながら、右のような場合でも、近隣の土地所有者のうち一部の者だけが著しく有利に取扱われ、その結果他の者の換地だけが従前の土地と照応しないような不合理な結果を生ずる場合には、その不照応は右の如き土地の地積減少による制約や技術的制約のために容認される限度を越えたものとなり、前記土地区画整理法の規定に違反した違法な処分となるものと解するのが相当である。

したがつて原告に対する換地が従前の土地に照応せず、かつ前記山本、山村、才津らに比較して著しく不公平な取扱いを受けたものであることは前認定のとおりであるから、原告に対する本件換地指定処分は結局土地区画整理法第八九条第一項に違反する違法な処分といわなければならない。

もつとも被告は一つの換地指定処分の取消しは必然的に適法な手続を経て確定した換地計画の全面的修正を余儀なくさせ、収拾すべからざる事態を招来するから基本たる換地計画を離れて個々の換地指定処分を取り消すことは手続違背のある場合を除いて許されないと主張する。なるほど換地処分は土地区画整理地区全域にわたり、整理目的にもとづき綜合的換地計画を策定し、その換地計画を基にして行われるものであるけれども、個々の具体的換地処分につき、利害関係人がその換地が従前の土地と不照応であるとして、各別に独立してその取消しを求め得ないとすべき根拠はなく、またその処分取消の影響が大であるということもそれが行政事件訴訟法第三一条第一項に該当することがあることは格別、その一事のみをもつて個々の換地処分の取消請求ができないと解すべき理由はないから被告の右主張は失当である。

三、しかしながら、検証の結果によると、原告の従前の土地を初め、その周辺の土地一帯は、本件土地区画整理事業による換地処分がなされて既に軒を連ねて建物が建ち並び一大商店街を形成していることが認められるから、原告に対する本件換地指定処分が違法であるとして取り消されると、その影響するところはひとり原告に対する換地のやり直しとなるに止まらず、換地計画全体の修正を余儀なくされ、その結果は右の如く換地処分が適法であるとして、その換地上に形成された多数の第三者間に生じた法律関係および事実状態をも一挙に覆滅し去ることにもなり、公共の利益に著しい障害をもたらすことは明らかである。一方これに対し、前記違法な換地指定処分によつて、原告が受ける具体的な損害は、原告本人尋問の結果によると、差し当つては右換地上に原告が所有し、訴外岩田正に賃貸している建物の賃料が従前より減少したことによる月三、〇〇〇円の損害に過ぎないと認められるし、また、右賃料減少以外に換地不照応による損害が考えられるとしても、それらは、右換地指定処分が取り消されることによつて多数の者が蒙る損害や社会経済的損失に比べると比較的僅少であり、しかも、右の損害は被告の属する公共団体よりの金銭賠償の方法により十分補填され得るものということができるものと認められる。

以上のような換地処分取消によつて生ずる公共の損害ならびに換地処分により原告の受ける損害の程度、その損害の賠償の程度、方法その他一切の事情を綜合して考えるとき、本件換地指定処分は違法であるけれども、これを取り消すことは、公共の福祉に適合しないと認めるのが相当である。

四、そうすると被告が原告に対してなして前記換地指定処分は違法であるが、前記の如く、本件換地処分を取り消すことは公共の福祉に適合しないと認めるから、その取消を求める原告の本訴請求は行政事件訴訟法第三一条第一項に則り棄却すべく、訴訟費用の負担については、本件は実質的に原告勝訴の場合に当るので民事訴訟法第八九条、第九二条但書を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 原政俊 右川亮平 野村利夫)

別紙

見取図(一)〈省略〉

見取図(二)〈省略〉

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